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State Papers Online: Early Modern Government in Britain and Europe

 

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(State Papers Online: Early Modern Government in Britain and Europe, SPO)は、英国国立公文書館の所蔵する近世イギリスの内政・外交に関わる国務文書(State Papers)を中心に、他機関の関連文書を合わせて電子化する一大シリーズです。テューダー朝のヘンリー8世が即位した1509年からステュアート朝を経て、ハノーヴァー朝の18世紀後半における行政機構の再編に伴い内務省と外務省が誕生した1782年までの約270年間をカバーします。オリジナルの手書き文書の画像とともに、それらを19世紀以降に要約・整理して刊行されてきた「カレンダー」と呼ばれる要綱もフルテキストで収録、両者を紐づけすることで検索・閲覧を容易にしています。

イギリス近世の国務大臣の文書を搭載

テューダー朝のイギリスでは、国王の権力や行政機能が拡大し、それまで国王の文書作成に関わってきた国王秘書官が、国務大臣(Secretary of State)として行政機構の中枢に位置づけられるようになりました。その権限は内政だけでなく、外交、諜報にもおよび、通常2名置かれていた国務大臣は、17世紀以降、対プロテスタント諸国外交を担当する北部担当国務大臣と内政並びに対カトリック諸国外交を担当する南部担当国務大臣という形に職務分担がなされました。国務大臣が扱う文書は、裁判記録、反乱に関する現地報告から教会財産査定記録、外国の国情報告まで、国政全般に及びました。イギリス近世は、中世的な国王の家政から近代的官僚制が成立するまでの行政機構の過渡期に相当します。この過程で国王の官吏は国家の官吏へと変貌しました。本シリーズは、個々の歴史的事件に光を当てるだけでなく、近代的行政官僚機構の成立過程をも実証的に明らかにします。

分散所蔵されてきた国務文書を電子的に統合

近世イギリス国務文書の編纂は、公文書の体系的収集の意識が高まった19世紀に始まりました。種々の政府関係文書館が公文書館として統合され、それまで政府の各部局が保存していた国務文書は統一的に保存されるに至ります。しかし、公文書館所蔵の文書が近世国務文書を網羅していたわけではありません。公私の区分の感覚が曖昧だった近世イギリスでは大臣が文書を私邸に持ち帰り、死後もそのままその家で相続されるという事例が頻繁に発生しました。これらの文書の中には、その後競売に付され、大英図書館の所蔵となったものもあります。また、失脚した大臣の文書は没収され、ウェストミンスター寺院参事会堂に保管されていました。このように、英国国立公文書館、貴族の私邸、大英図書館等の機関で分散保存されてきた国務文書は、19世紀以降、歴史家やアーキビストにより所在確認と文書内容の調査が行われ、その全貌が明らかになりました。本シリーズは、数世代にわたり分散保存されてきた国務文書を電子的に統合するものです。

国務文書カレンダーの全文検索と文書との紐付けを実現

しかし、分散保存された国務文書を電子的に統合するだけでは十分ではありません。刊行物と異なり、タイトルも目次もない文書を研究利用に耐える史料にするには、刊行物の目録に相当するツールが必要です。こうして製作されたのがカレンダー(Calendar 要綱)です。カレンダーは、文書毎に標題、発信者、受信者、発信地、日付、要約を明記し時系列に配列したもので、国務文書の研究に計り知れない貢献を果たしてきました。中には、文書を逐語的に筆記したものや、外国語を英語に翻訳したものなど、要約のレベルを超えた詳細なカレンダーもあります。本シリーズは、オリジナルの手書き文書の画像に加え、全文検索に対応したカレンダーを搭載し、文書とカレンダーの紐付けも行ない、歴史資料としての国務文書の利便性を飛躍的に高めています。

近世イギリス外交と近世ヨーロッパ国際関係史を外交官の目を通して再現

内政だけでなく外交も管轄した国務大臣の下には、諸外国駐在の大使、公使、領事から駐在地の国情報告が寄せられました。スコットランド、アイルランドから、オランダ、フランドル、スウェーデン、神聖ローマ帝国、ドイツ領邦国家、ハンザ同盟都市、ポーランド、ロシア、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、オスマン帝国まで、発信地はヨーロッパ全域に及びます。本シリーズは、ヨーロッパ辺境の小国に過ぎなかったイギリスが覇権国家の地位を確立するまでの約300年にわたるイギリス外交を当事者の目を通して再現するだけでなく、近世ヨーロッパ国際関係の歴史、主権国家体制の成立過程にも新たな光を当てます。

情報、ニュース、新聞の歴史を学問的に再検討する機会を提供

国内外からの情報が国務大臣の下に集約される国務文書は情報、ニュース、新聞の歴史にも痕跡を残しています。16世紀と17世紀はパンフレットや新聞等の印刷物を通して、思想や情報が容易に流通するようになるとともに、国家がそれを規制しようと試みた時代です。初期の新聞は内外の情報を政府の情報チャンネルに依存していました。内政、外交に関わる情報の流通にも目を光らせていた国務大臣の文書には、規制の網をかける国家とそれをすり抜けようとする出版業者、パンレフット作者、反体制派の相克の実情が報告されています。近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)は、情報流通を規制する国家の視点から、イギリス近世の出版史、新聞史を学問的に再検討する機会を提供します。


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(約42分、字幕・チャプターあり、スライドはこちら


テューダー・ステュアート朝編

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 第1集:テューダー朝 内政関係

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)第1集は、ヘンリー8世からエドワード6世、メアリー1世を経て、エリザベス1世に至るテューダー朝の内政関係の国務文書を収録します。歴代国務大臣の文書を通して、宗教対立と権力抗争を巡る数々の陰謀に揺れ動いたテューダー朝100年の歴史が蘇ります。

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 第2集:テューダー朝 外交関係・スコットランド・アイルランド・枢密院文書

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)第2集は、テューダー朝の外交関係の国務文書と枢密院文書を収録します。スコットランド、アイルランドの他、ヨーロッパ諸国からオスマントルコまで、16 世紀のヨーロッパの国際関係がイギリスの外交官の目を通して再現されます。

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 第3集:ステュアート朝 内政関係

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)第3集は、はジェイムズ1世が即位した1603年から二つの国制革命を経てジョージ1世が即位するまでのステュアート朝110年の内政関係の国務文書を収録します。

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 第4集:ステュアート朝 外交関係・スコットランド・アイルランド・枢密院文書

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)第4集は、ステュアート朝の外交関係の国務文書と枢密院文書を収録します。スコットランド、アイルランドの他、ヨーロッパ諸国からオスマントルコまで、17世紀のヨーロッパの国際関係がイギリスの外交官の目を通して再現されます。

18世紀編(ハノーヴァー朝編)

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 18世紀編 第1集:内政・陸海軍・枢密院文書

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)18世紀編の第1集は、1714年から1782年までのハノーヴァー朝初期68年間の内政と陸軍、海軍関係の国務文書と枢密院文書を収録します。

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 18世紀編 第2集:外交関係 ドイツ・低地地方

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)18世紀編の第2集は、1714年から1782年までのハノーヴァー朝初期68年間の外交関係の国務文書のうち、ドイツや低地地方などプロテスタント諸国との外交を管轄した北部方面担当国務大臣の国務文書を収録します。

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 18世紀編 第3集:外交関係 西ヨーロッパ

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)18世紀編の第3集は、1714年から1782年までのハノーヴァー朝初期68年間の外交関係の国務文書のうち、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどカトリック諸国との外交を管轄した南部方面担当国務大臣の国務文書を収録します。

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO) 18世紀編 第4集:外交関係 北欧・東欧・トルコ

近世英国国務文書・関連文書シリーズ(SPO)18世紀編の第4集は、1714年から1782年までのハノーヴァー朝初期68年間の外交関係の国務文書のうち、デンマーク、スウェーデン、ポーランド、ザクセン、プロイセン、ロシア、オスマントルコ、バーバリ諸国関係の外交文書を収録します。