Transcripts of the Malcolm X Assassination Trial
黒人運動の指導者マルコムXは1965年2月21日、ニューヨークのオーデュボン舞踏場で暗殺されました。殺人容疑で逮捕されたのは、トマス・へーガン(Thomas Hagan)、トマス・ジョンソン(Thomas Johnson)、ノーマン・バトラー(Norman Butler)で、3人ともネイション・オブ・イスラーム(Nation of Islam)のメンバーでした。
ネイション・オブ・イスラームはアメリカ社会への統合を拒絶し、アフリカ系アメリカ人の民族のアイデンティティ復権を掲げた団体で、マルコムX自身、ネイション・オブ・イスラームの指導的な運動家でしたが、暗殺される1年前に袂を分かち、脱退していました。
裁判では容疑者は3人とも無罪を主張しましたが、演説を聞いていた聴衆によって現場で拘束されたへーガンのポケットから弾倉が見つかり、発煙弾から指紋が見つかったことで、無罪の主張の根拠は薄いと見られました。事件発生の数分後に逮捕されたバトラーは事件の数週間前に警察から銃でなぐられ身体が不自由になっていたため、仮に実行犯だったとしても、誰にも気づかれずに現場から逃走できた可能性は非常に小さいと見られました。事件直後に自宅にいるのを目撃されているジョンソンは、現場から急いで自宅に戻った可能性は小さいと見られました。
裁判ではマルコムXの未亡人ベティ・シャバズ(Betty Shabbaz)、マルコムXの友人や敵対者、連邦捜査局(FBI)捜査官等、多くの人々が証言台に立ちましたが、へーガンが証言台で暗殺への関与を供述したことで、急展開を見せます。罪悪感に襲われ、沈黙すればバトラーとジョンソンが有罪になることを恐れたへーガンは、マルコムX暗殺の罪を被り、2人を無罪にしようと試みました。検察も弁護人もへーガンの証言は真実性に乏しいとみなし、検察は、起訴が避けられないと判断したへーガンがバトラーとジョンソンを救うために証言をしたと主張しました。裁判では検索側の主張が支持され、へーガンとバトラーとジョンソンは第一級殺人で有罪となりました。
その後、へーガンは、マルコムX暗殺はネイション・オブ・イスラームのニューワークモスクの5人のメンバーによって実行されたものであり、5人の実名を挙げて事件の真相を宣誓供述書で述べています。ジョンソンとバトラーについては裁判での証言と同様、無罪としていますが、裁判所はジョンソンとバトラーの有罪を覆すことはありませんでした。
本コレクションは、マルコムX裁判の記録を収録するものです。証言台に立ったすべての証人の証言を完全な形で収録する他、予備申立、最終弁論、裁判官の説示、陪審員の評決、裁判所の判決、公判後のへーガンによる証言を収録します。
(マイクロ版タイトル:Transcripts of the Malcolm X Assassination Trial)
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